【第5回】子供の為の家造りを考えていますか?

最近、ニュースなどで少年犯罪が報道されない日はないくらい毎日、どこかで起こっているような気がします。
事件背景に受験の悩み、両親との確執や離婚、異性との悩み、友人とのトラブルなど多面的な要因が考えられます。
理解不能な精神障害による突発的な事件も多々あり、考えさせられるものもあります。
実際に、落ち着きがない、過剰に動きまわる、注意力が無い、知能指数は高いが成績は悪いなど、
教育だけで解決できない事もあるのではないでしょうか?
私ども、住宅の仕事に携わっているため、住環境の面からいろいろと考えます。
「ホルムアルデヒドなどによる化学物質の子供に対する影響は無いのでしょうか?」
「化学物質過敏症」で気分が悪いだとかの症状はわかっても、子供の成長期に神経機能に悪影響は与えないのだろうか?」
と疑問に感じます。ここにちょっとした記事を掲載します。
少しでも問題提起できたらと思います。
キレる子供と化学物質  (発行企画:夢ハウスビルダーネットワーク)
終の住みかで起きた動機のない犯罪・・・・・・・
世界中で、若者が突然「キレ」て、衝動的に暴力行為におよぶ現象が急増している。
ドイツの国民の80パーセントは、若者が従来よりも暴力的になったと感じており、アメリカでは犯罪の低年齢化が進んでいる。
日本でも青少年による凶悪犯罪が年々増え、1998年には中学生によるナイフ事件が多発した
(「ニュースウィーク」98年4月8日号)
問題なのは、発生件数よりも犯罪の質の変化である。
先進諸国の多くで、少年犯罪の全体数は横ばいだが、暴力事件は増加している。
ドイツのニーダザクセン犯罪研究所によれば、
80年代半ばからの10年間にイギリス、ドイツ、フランス、イタリアなどの先進諸国で
未成年による凶悪犯罪が約50パーセント以上増加したという。
日本も同様で97年に刑法犯で補導された14~19歳の少年は、
前年比14・4パーセント増の15万2825人。
強盗・殺人の凶悪犯は2263人で、一昨年より50パーセントも増えている。
気になるのは、日本では他の先進諸国に比較して、青少年人口の占める犯罪比率が異様に高いことである。
98年前半に集中した中高生による殺人や障害事件の特徴は、
犯罪におよんだのが普段はおとなしい普通の子だったことだ。
それが、通常では考えられないようなささいなきっかけで、衝動的に凶悪犯罪を起こすに至った。
多くの場合、どれも殺人を犯すほどの動機はなく、突然キレて、「頭の中が真っ白」になったと説明されている。
こうした一連の事件を見聞きするうち、思い出した昔の事件がある。
金属バット殺人事件が、東京郊外の住宅街で発生したのは、1980年11月のことだ。
20歳になるA家の次男が、就寝中の両親を金属バットで撲殺した。
舞台となった高級分譲地に、一家は事件の4年前に土地を求めて、木造住宅を建てている。
1階は、6畳、8畳の和室に洋風の居間、キッチン、風呂、納戸。
2階は、子供部屋がふたつ。
道路から一段高い敷地に建つ、庭のある小ぎれいな家だったとう。
事件は、一家の長男が努力の末に手に入れた、「家の住みか」で起きた。
当日、近隣の人の通報を受けて現場に踏み込んだ捜査員は、血みどろの惨状に息をのんだ。
盗み目的の通りがかりの反抗とはとても思えない。
無抵抗の人間をそこまでめった打ちにした「奇怪なエネルギー」に思わず戦慄したという。
ところが、その後犯人と判明した次男は、動機について「どうしてこんなことをしてしまったか、自分でもわからない」と繰り返す。
何度取り調べても、弁護士が接見しても、前夜に両親に叱られたという程度ではっきりとした動機は割り出せなかった。
次男が浪人生であったことから、マスコミは、事件の背後に加熱した受験地獄があるという見解を打ち出した。
しかし、受験生や浪人生はありふれた存在である。
受験に失敗してから、勉強がはかどらないから、叱られたから、という理由で彼らがバットを握り締めて、
両親の生命を奪うのだとしたら、世の親たちは命がいくつあっても足りなくなる。
この事件は動機不明確な尊属殺人だけに、世間の関心は高く、多くの知識人が論議するところとなった。
【印象的だったのは、建築家が居住学の立場から、この家の間取りに問題があると指摘したその内容だ。】
まず、父親と母親が別の寝室に休んでいたこと。
ふたりの子供の部屋はそれぞれ2階にあること。
まるで家庭内別居の走りである
さらに、玄関から直接2階に上れる位置に階段がついている。
子どもが帰宅しても親に顔を見せることなく、2階の自室に入り、食事まで部屋から出てこないことになる。
そうした家に暮らすうち、親子のコミュニケーションが薄くなり、
親は子どもが何を考え、何をしているのかわからなくなり、子供の変化を読み取れなくなるという。
実際、その後発生した青少年による殺人事件も、反抗におよんだ少年の自宅は、この家に似た間取りだった。

「新築の家で狂った歯車」

事件が起きた家はその後とり壊され、今となっては写真から推し量るしかないが、
やはり建築家たちの指摘通り、家がもたらした悲劇と思われる。
もちろん、間取りの問題だったが、この時代に建てられた家であれば、
当然、ホルムアルデヒド、有機塩素系化学物質、有機リン系化学物質による室内汚染があった。
このころは合板にホルムアルデヒドのJAS規格もなく、
新築当時の室内のホルムアルデヒド濃度は相当なものだったと推測される。
また、当時は木材防腐剤やシロアリ駆除剤クロルデンが使われていた。
クロルデンは有機塩素系の殺虫剤で、神経毒性があり、生殖機能、神経、免疫機能などに悪影響をおよぼす。
最近では、ホルモン異常や精子数の低下、インポテンツなどをもたらす環境ホルモンであることも知られている。
家と犯罪の間に、有害化学物質を置くことで、この事件の謎が解明できるのではないだろうか…。
事件の記録をひもとくと、家族の心の行き違いが始まったのは新しい家を建ててからである。小学校時代の次男について、担当教師は「とてもいい子でした、身のこなしがすばしっこく活発、いたずらもしたが、明るい子だった」と話す。中学までは明るく元気よく成績もよかったが、新築の家に入居した高校からは物事に対してまともに取り組めなくなり、無気力になる。成績が落ち始め、受験失敗後は、いっこうに勉強がはかどらなくなっている。

近親者の証言によれば、事件発生の数年前から父親は精神不安に陥り、欝気味、ノイローゼ気味だったという。次男も取り調べに対して、高校2年のあたりから朗らかで明るかった父が無口になり、母に全然口をきかなくなったこと、毎日夜中の12時過ぎに酒を飲んで帰ってきたことなど語った。「それまでそんなことはなく、今まで家中が明るくて、家族みんな仲良くしていたのに、なんか家の中が暗くなってぼくもいい気持ちはしませんでした」

明るくなごやかな家庭に、冷たいすき間風が吹き込み、心がバラバラになっていった。
裁判によって、前の晩に両親に叱られたことにより、次男の犯行への起爆装置にスイッチが入ったことが明かされていった。叱られて腹が立ち、怒りが憎しみに変わり、突然殺意にいたる。「犯行事前、何を考えていましたか」と質問が繰り返されたが、自分でも「何を考えていたのかわからない」としか答えようがない様子である。困ったあげく、最後にやっと「頭のなかが真っ白になっていた」という言葉を見つける。今風に翻訳すれば、キレたのである。

「問題児と化学物質(多動症と環境ホルモン)」

最近キレる要因のひとつとして生活環境の化学物質に注目する識者がいる。
つまり、衝動的な暴力や攻撃性は、化学物質が神経系やホルモン系に与えた結果だというのである。
すでに1975年、サンフランシスコのアレルギー医ファインゴールド博士が
著書『なぜあなたの子どもは乱暴で勉強ぎらいなのか』(人文書院)で、
食品添加物(合成着色料や着香料)などの化学物質が青少年の心と体に悪影響を与えると発表した。

化学物質の摂取がもとで、こどもがアレルギーになったり、
落ち着きがなく反抗的になり、非行に走りやすくなるという。
これらの症状は、今でいう多動症である。
博士は数多くの臨床経験からこの関係性を見つけ出し、動物実験も行った。
マウス、ハト、ネコに化学物質を混ぜたエサを食べされたところ、
無意味な行動や過剰な激しい行動を繰り返すという結果が出たのだ。

これは、化学物質による神経障害に原因があると考えられた。
つまり、神経機能は精神状態に密接に関係しており、
神経に障害がもたらされれば、当然精神状態や行動に影響が現れてくるということだ。
もちろん、子どもの精神状態や心理問題は、人間関係としての家庭・社会・教育環境の問題に発する。
しかし、加速度的に進行する子ども社会の異常は、課程や生育過程だけでは説明がつかないものがある。

「増え続ける『おかしい子ども』」

日本体育大学の正木健雄教授らが79年から90年に全国で実施した「子どものからだ調査」には、
現代っ子の思いがけない姿が報告されている。

現場の先生たちが実感する「子どものおかしさ」を調べたところ、
保育園・小学校・中学校・高校に共通するワースト・ワンにアレルギー疾患が挙げられ、
他に肩こり、視力不良、皮膚のカサカサ、物事に集中できない、根気がない、日中のあくびなど、
およそ子どもらしくない様子が浮き彫りになった。

こうした子どものおかしさは60年代から散見され、その後増加の一途をたどり、近ごろは「おかしい」方が多いという。
この調査報告で気になったのは、各地の先生が、クラスで問題児だと感じている児童のタイプがほぼ共通していることだ。
物事に集中できず、じっとしていられない。
授業中に目的もなく席を立って歩いたりするほどで、先生の言うことをきけない。
いわゆる多動性の子なのだが、こうした子は必ずといってよいほどなんらかのアレルギーがあり、勉強もできないという。
アメリカでも、多動症の子は学習障害をともなっており、なんらかのアレルギー症状をもつことが知られている。

「多動症と環境ホルモン(注意欠陥多動症障害)」
現在アメリカでは13歳以下の子どもの5~10%が多動症という。
多動症とは、医学的には「注意力欠陥多動性障害」と呼ばれる学習障害児たちだ。

・落ち着きがなく過剰に動きまわる。
・聞きわけが悪く反抗的な態度をとる。
・ひとつのことに集中できない。
・知能指数は正常だが学校の成績は悪い。

などの特徴をもつ。

大人が見せる化学物質過敏症の症状と、子どもの多動症にはよく似た面がある。
アメリカではこうした多動症の子どもたちには、甲状腺の異常が多く見られると報告されている。
甲状腺は脳の正常な発達に欠かせないホルモン、チロキシンを分泌する。
ジョージア医科大学のスーザン・ポーターフィールドらはPCBやダイオキシンが、
甲状腺ホルモンを撹乱して、多動症を起こすと指摘している。

甲状腺は、首のつけ根にある内分泌器官だ。
甲状腺から分泌されるホルモンは、心拍数の決定に関与し、筋肉と骨の発達を促進するうえ、専心状態や記憶力にも影響する。甲状腺に異常があれば、体すべての器官が正常に機能することは望めないとすら言われている。
専門家によれば、化学物質によって甲状腺ホルモンなど内分泌系の作用を撹乱されると、
それによって脳や中枢神経は正常な発達を妨げられるという。

甲状腺ホルモンには他の多くの化学物質も作用する。
EPA(米国環境保護庁)環境毒物学部門の主任、リンダ・バーンバウムは、
「複数の化学物質が、 甲状腺の機能を撹乱しているとなれば脳発達におよぶその有害な影響も無視できない」と、
他の化学物質による脳の発達阻害や情緒・感情の障害、思考力・判断力などの
知能の低下および行動異常への注意を促している。

甲状腺異常が、知能の遅れをもたらす。
それだけでなく、不眠症、もの忘れ、憂鬱な気分、活力減退などの精神障害も引き起こす。
フタル酸化合物は、ダイオキシン、PCBと並ぶ甲状腺ホルモン撹乱物質(環境ホルモンの一種)である。
日本の住宅の室内空気には、塩ビ建材から揮発したこの甲状腺ホルモン撹乱物質が、
大変な濃度で存在している事実を忘れてはならない。

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